スマートコミュニティー

通常、我々国民は、国税や地方税を払い、その金をまとめて、国家や地方自治体が我々国民や住民に対して、必要なサービスを提供するというのが、本来の形です。また、我々が勤めている企業などは法人税を払い、それも重要な財源となります。

しかし、最近は異常気象で台風に見込まれ、あちこちで水害、災害が発生し、住民に避難勧告や避難命令が出され、動けない老人などは、「私は動けないので、ここに留まり、万が一のことがあれば、ここで死ぬ覚悟がある」という人もおります。

災害だけでなく、乳児幼児の保育所にしても待機児童が多く、なかなか全員収容が実現しない。老人対策も一緒で、アルツハイマーの重症患者や、養護施設の専門職員の給与が安く、なり手が減少するなど、問題だらけ。道路や橋などの交通インフラにしても、地域によってはメンテナンスの金も無く、まともな保守作業が出来ない自治体も結構あるという。

実際に中央高速でおきたトンネル内での天井崩落事故は、被害者が裁判を起こしても、当事者は「危険を予知する事は出来なかった」とか「天井のつり金具がちゃんとしているかどうかのチェックは出来にくかった」等の理由で、責任を逃れる発言をしているという。チェックが出来にくいような構造物を作っておいて、「事故は予測できない」というのは言い逃れも良いところで、これが行政のサービスの実態です。

財資が腐るほどあれば、どうにでもなるのでしょうが、本来ものを作るときに、いつまで使って、いつ壊すとか、作り替えるとかの計画を立てるべきで、それなしに事を進めてきたことが結果として現在の問題を起こしているわけです。

エネルギーも大都市ほど大量に確保する必要があります。省エネ技術としては、各家庭で家ごと省エネや、工場、ビルなど個別又はそれを束ねて省エネ効果を高めるなどの研究はかなり進んできました。

そうしたものをまとめて都市開発に適用し、エネルギー、自動車、公共交通機関、住宅、ビル、工場などを地域ごとまるめて、一括適用することを「スマートコミュニティー」と称して、日本は勿論、世界各国で色々の取り組みが行われています。

しかし、ここで気をつけなくてはいけないのは、私たちは「国や自治体が必要なことはやってくれる」、あるいは「やるべきである」という発想が強すぎるのではないか? 言い方を変えれば、確かに自分たちの払った税金が使われるのですが、どれだけその使われ方にチェックの目を向けているかということです。

戦後65年以上も経ち、右肩上がりの経済に乗じて、市役所のビルも立派になり、人口も終戦当時からすれば大幅に増加し、各種インフラも整備されてきました。しかし、人口が減り始め、老人化がどんどん進み、財資が減ってきた現在、どう見てもそのしわ寄せを吸収する良いアイデアなんて、世界宝くじセンターで100兆円でも当たるような幸運が舞い込めば別ですが、夢のまた夢です。

にもかかわらず、現実はどう見ても「役所があるから仕事を作る」方式の発想で、その仕事が住民にとって必要不可欠だから、プライオリティーが非常に高いから予算を使ってやる発想ではない。

細かい話ですが、現実に私の住んでいる自治体がやっている話で、後期高齢者全員に、曰く「あなたは銀行に自分で行っていますか?」「金の引き下ろしを自分で出来ますか?」などの、言ってみれば、ぼけているかどうかの問診票みたいなものを毎年性懲りもなく送ってきて、その返事に○×を付けて返すと、「あなたの日常生活は支障なくできているようです。これからも気をつけて健康な生活を送って下さい」と言ったような、どうでも良いような内容の返事を立派な印刷物にして返してくる。

これはどう見ても印刷代だけでも大変な無駄で、これだけの金があるなら、ほんとにぼけて困っている人もいるはずなので、その様な方々に、個別に絞り込んで面倒を見た方が良いのではと思います。しかも私は「銀行には1人で行けますが、金は下ろしていません!?」とあるとき返事をしたら、役所の方が男女2人のペアで自宅に訪問してきて、「面談したいのですが?」とインターホンで聞いてきたので、「特に問題はありませんので、面倒を見てあげなくてはいけない人の面倒を見てあげて下さい」と言って追い返しました。

彼らによると、「銀行に行けるけど、金は下ろしていません」の意味が、「金を下ろせない」と理解し、なぜかを確かめたかったようです。ずいぶん親切と言えば親切、お節介と言えばお節介ですが、「住民税が高いので、無駄な金がないから下ろしていません」と言っておきました。

それだけかと思ったら、今度は警察のご担当が、このマンションで後期高齢者の家庭のデータを集めていて、振り込め詐欺に遭わないようにご指導をされているそうです。

しかも笑い話にならないのは、折角集めた資料をマンションの管理室に忘れて帰ってしまったので、後刻取りに来たそうです。警察も老人ぼけにならないようにがんばって下さい。要は、警察も役所ももっとお互いに情報交換して、効率の良い仕事の仕方を考えれば、もっとコストも下がり、結果税金も安くできるはずです。

日本の話はこのくらいにして、こうした問題は日本だけでなく、アメリカでも地方自治体の運営は大変のようで、財政難を克服するために、市の大方の仕事、消防、交通、福祉、上下水、ゴミ処理等、警察と刑務所以外のほとんどの仕事を、民間やNGO等との協力で、年間の費用を半分近くにした市があります。ジョージア州のSandy Springs市です。

先月横浜で行われた「Smart City Week」の講演会で、Sandy Springs市のCity Managerが市の運営について講演したので、聞いてきました。

この市は人口約10万人、年間予算が約100億円位の都市です。その運営の方法ですが、前年度に、次年度の活動のためのパブリックヒアリング(公聴会)を徹底的にやって、市民からの意見を吸い上げる(事務局)。それらの意見を繁栄させて、優先順位を市として整理し、それを市の議会に提出して(政治)、揉んでもらった後、次年度予算を決定し、実行に移す、といったスケジュールで行うのですが、ポイントは、民に委託できる仕事は徹底的に委託する。NGO等との提携も行う(特に医療福祉関係等)。PPP(Public Private Partnership)やPFI(Private Financial Initiatives)で出来ることは出来るだけ活用する。最低限市として直営でやらなければならい事だけは直営で行う。

公共事業で、消防などは近隣の都市との連携も行って効率を上げる。今まで独立して管理していた、例えば福祉事業とスポーツ関連をパッケージにして、健康と福祉として、総括運営することによって、経費の削減と相乗効果を生むなどの結果を出している。

公聴会での基本方針は、各種事業はあくまで市が市民に対して行うサービスとして実施しているということです。市長や市議会がやりたい、あるいはやろうという方針で、市民の税金を使うという事ではないということが基本にあるということです。

日本でこれをやろうとすると、まずは、市の職員としての雇用関係で労働組合との問題が出てきて、実現が難しいという話になるのではと思います。しかし、背に腹は替えられない状況がいずれ来たときに、このようなオプションを使わざるを得ず、それも本来は出来るだけ早い段階で、上述したような無駄な仕事を自らカットして行くような考えにならなければ、進歩や改革は難しいでしょう。

話は飛びますが、最近少し古いマンションで、長期の修繕計画をまともにやらず、あるいは金がかかるからやらないで、そのまま、30年、40年経過して、管理組合も崩壊し、建物そのものも崩壊寸前というところが結構多くなって来ているとのレポートをTVでやっていました。これは国家に置き換えれば、国民(住人、市民)から金が取れなくなれば、必然的に、管理も保守も出来なくなり、マンションは勿論、市や国家まで崩壊するというパターンを単純に想像しないところが問題で、私たち市民がもっと厳しく、自分たちの金を使って、自分たちのために、必要な学校や、交通インフラ、上下水道、エネルギー等を整えているという強い発想を持ちたいですね。

それを社会のせいにしたり、政府のせいにしたりしても、所詮誰も解決はしてくれそうにもありませんので、結局は自己責任で、行き詰まったら「のたれ死ぬ」くらいの覚悟があれば、人生楽しいかどうか分かりませんが、少なくとも鬱病にはならないで済むかも知れません。