会社役員と担当者の直接対決

上司と部下の関係では一般論を書きましたが、時には自分の立場からはかけ離れた社長や会社役員と直接対決せざるを得ない場面も一生に一度や二度はあるかも知れません。大体そんな時は、自分が非常に不利な立場とか、断崖絶壁に立たされるケースなどが想定されます。その様な場合は、自分が悪くなくても普通のサラリーマンなら、「申し訳ございません」とか「以後気をつけます」とか訳の分からない日本文化の見本のようなことを言って、うやむやに終わらすケースが多いはずです。あまりお勧めしませんが、その日本的解決方法でないやり方を少しご紹介しておきます。

  • 専務さんとの直接対決!
    専務さんに直接文句を言われて、開き直って「悪いのは直属の上司たちだ」と名指して文句を言ったケース

事の起こりは、私が役員室直結の特殊部隊に転勤して3日も経たない日の出来事です。出勤早々、直属の課長に「背広を着てすぐに専務のところに行きますので一緒に来て下さい」と、穏やかでない雰囲気で言われた。「社内だから背広はいらないでしょう」と言って、意固地に、Yシャツのままで、専務のところに出かけた。

席には、課長、室長、専務とオールスターキャストで勢揃いしている。「何のお話でしょうか?」と切り出すと、いきなり専務さんが、「君はけしからん、仲間に鉄鋼出身の人がいるにもかかわらず、機械部出身の君が勝手に海外で行われる鉄鋼会議に出席を承諾したそうだが、間違いないか?」と聞かれた。大体様子が読めたので、いきなり机をたたいて、「冗談じゃない、私だって新入生じゃあるまいし、会社の出張の手順を知らないわけでもないし、そもそも、昨日、鉄鋼会議の事務局から私に直接コンタクトがあって、出席可能か打診があったので、今のところ特にスケジュールは何も入っていないので可能ではあります、とだけ答えておいただけ。しかもなぜ私に出席依頼があったかも、事務局から説明があり、前回の会議で、私が海外にいて、機械出身にもかかわらず、鉄鋼商売にも多大の寄与をしてくれたことを、鉄鋼の専務さんが直接知っていたので、今度も私に出席を依頼しろと命令したという事も聞いている。だからとりあえずOKの返事をしただけだし、しかもこのことは、ここにいる課長や室長にも全部昨日報告もしてある!!」と一気にまくしたて、「なんで私が専務さんに怒られなくてはいけないのか、判らないし、そもそも大変不愉快だ!」と大専務さんにくってかかった。(その方が部長さんだった時のあだ名が「消し炭」部長というのだと、友人が教えてくれた。そのこころは、「消し炭」はすぐ火がつきやすい!!)

さて、そこで専務さんはなんと言ったでしょう?!というのが問題です。

さすがですね。世の中理屈が合えば、ちゃんと理解はしてくれるようです。但し、成績をつけるのは直属の上司ですから、こんな事をしていたら、良い点はつきませんのでご注意を。

専務さんは「判った、今日一日この件はわしに預らせてくれ」と言ったので、「結構です」と言って、その朝の話はおしまいです。

その日の夕方、突然電話があって「村野君? 俺だ!」「俺じゃ判らないですよ!」「専務だ!」「了解しました専務! ところで問題は解決しましたか?」「俺が悪かった、お詫びのしるしに、今日は俺がごちそうするから、仲間も呼んで、和食堂に来るように!」「了解です、大勢連れて行きますからよろしく」。以上で電話の会話は終わりです。

その後食堂で、「悪かった。これで許してくれ」と言われて、一回だけの食事で許すのもしゃくだけど、まあ今回は許しますなどと急に大口をたたいて、無事?一件落着です。でも私が感心したのは、素直に「俺が悪かった」といった言葉が出てきたことです。普通はなかなか出てきませんよ!

実はその後の話があって、久しぶりに会ったら、「イヤー元気かね? 私は君のことは何も心配しちゃおらんよ、存分にやってくれたまえ!」という激励の言葉で終わりでした。やはり上司は上手にだまさないといけません。