仕事の仕方あれこれ(現場が絶対)

どんな仕事にも「現場」というものが存在します。ところが大方のケースは、事務所でパソコンとにらめっこでの書類作りや、メールのやりとり、あるいは社内会議などの報告会や報告会など、直接現場で起きたことのフォローのような仕事を、仕事だと思ってやっているケースがほとんどです。

何を今更、現場が大事だ等とほざくのか?とお叱りを受けるかも知れませんが、やはり「現場無くして、仕事なし」と言っても過言でないくらいに、現場は重要なのです。例えば、私たちがよく利用する都市銀行のケースを考えてみます。

お客様一人一人の事を考える銀行ですとか、似たようなキャッチフレーズで、どこの銀行も営業をしています。銀行の現場は、なんと言っても、お客さんと直接対話のある、カウンター窓口です。しかし、私のようなひねくれ者は、どう見ても、客のことを考えて窓口業務をやっているとは思えず、カウンターの向こう側で、サラリーマン生活をしているのではと、疑いたくなるようなケースが多々あります。

例えば、単純な話で、公共料金をコンビニで払う場合は、金額表示されたパネルにこちらがタッチして確認するだけで、支払い完了です。後はコンビニの店員さんから、領収証を返してもらうだけです。

しかし、同じものを銀行に持って行けば、まず、銀行の伝票に、公共料金の金額と支払枚数と、自分の名前と電話番号を書かせられます。それに金額を添えて、やっと受付が終わります。

そのあとの作業を見ていると、その受け付けられた書類一式を計算し、チェックし(ここまでは最低限の作業でしょうが)、それをお皿に乗せて、彼女の後ろ側にあるカウンターに持ち込みます。その持ち込まれた皿は、色々な窓口から持ち込まれた皿と一緒に順番待ちをします。その皿の書類を1人の方がコンピューターに打ち込んで、また元の窓口に人力で(歩いて)戻します。ここまでで既に、窓口に呼ばれてから、10分以上経っています。

今時のIT作業の権化のような銀行で、5~10の窓口の資料を一カ所でデータインプットをするということは、どう見ても効率が良いとは思えず、インプットミスの件数を減らすために、窓口にはやらせていないというのかどうか、聞いていませんので分かりませんが、私に言わせれば、銀行側の作業をする間、お客に無駄に時間を過ごさせていると考えられます。

受付窓口で金額と請求額が合致していることを確認すれば、後は銀行側でゆっくり作業をすれば良いだけなのに、客の時間まで取らせて自分たちの仕事をするというのは、どう見ても「お客様のための○○銀行です」などいう看板は取り下げて欲しいものです。これは支店長さんや、後ろの方に座っている主任さんなどに、窓口の女性の仕事効率や、ましてやカウンターの外に立っている客の時間など、眼中にないとしか言いようがありません。現場である窓口を客の立場で考え、コンビニの支払いの簡単明瞭な方式を考えれば、もっと改良の余地はあるはずです。

この程度の事は銀行関係では腐るほど経験しており、まあ、命に差し障りがあるわけではないので、皆さん優しいので文句も言わずに黙って、銀行さんのために無駄な時間を割いているわけです。しかし、これが命に関わるとなるとそうはいきません。

例えば、海外のプロジェクトの現場と、管理する立場の東京の事務所では、感覚的に全く立場が異なります。しかも、最近は伝達のための手段が進歩したため、遠く離れた東京から現場へも、気楽にメールやらスマホで、また場合によっては、TVカメラで、現場の状態でさえ、遠隔操作で見る事も出来ます。このような容易さが、ある意味、非常に危険なのです。

ある現場で、現場責任者が、現場の状況を良くチェックしておけと言われて、現場事務所から、現場にいる監督に同様のメッセージを伝え、それで見たことにしたわけです。結果として、造りかけの橋が落下し、多数の死傷者を出したケースなど、このほかにも似たような事が特に最近多いのが問題です。

現在では通信手段が進歩し、映像などが、まさにバーチャルな世界を実現しています。しかし、映像と現場で目視をするということとは、全く異なる作業なのです。

例えば、普通の営業マンが客先と直接話をしたとして、それを上司に報告しても、報告はあくまで、言葉での内容説明に過ぎません。相手がどんな風体で、どんな話し方をして、仕事に対してはどんな考えを持っていて等々、単に業務報告書に書かれた内容だけでないものが現場からは読み取れます。それが長年続けば、そこから、表に出てこない情報だって、読み取れるかも知れませんし、いざ何かあったときに、自分が判断する材料となるかも知れません。

私が実際にある華僑と取引をしたときに、本社からは、相手のDun & Bradstreet Report(俗称:Dunレポート)という、言わば企業の信用調査の資料を取れと言う。僻地の華僑の資産内容や企業情報が、先進国ならいざ知らず、あるはずがないことを平気で自分の物差しで現場に要求してくる。それで、彼ら華僑の取引内容や規模など状況証拠を出して、何とか取引をしましたが、結局その華僑は大物で、今やそこの番頭さんにもろくに会えないと現役社員が言っていました。

このように、現場と管理をする側とでは、本質的に異なる立場にいるということを前提に仕事を組み立てておかないと、とんでもないことが起こるということを認識しておく必要があります。

最近、伊藤忠商事の社長が社内改革の一環として、残業禁止や、早朝出勤奨励などをやって話題になっています。その中の一つに、業務報告書等がありますが、これは現場の状況などを報告する、言わば現場の声を中に伝える資料です。しかし、それを報告する内容は上述したように、単に事実だけを報告するだけで、そのために余計な労力を担当者に課せることの無いように、簡素化したり、廃止したりしたということです。

社長によれば、経営者や上司は心配だから社内会議をやるが、実際には社内会議などは上司の気休めで、担当者にはロードがかかり、決して有効な手段ではないと言っておられます。全く同感です。

そんなわけですから、新入生や、下っ端の方は、極力現場に出て下さい。一番大切な現場に立たされているのは結構新人が多いので、これは逆に考えれば、最大のチャンスです。偉くなってからは、よほどのことがない限り、現場に出る機会などありません。是非若いうちに、現場の重要性を認識するために、積極的に現場で実力を養って下さい。