終身雇用と改正高年齢者雇用安定法

今年の4月から、希望する全社員が65歳まで働けるよう、企業に義務づけた「改正高年齢者雇用安定法」とか言う法律が施行される事になったようです。

私たちの時代は、少なくとも一部上場の会社では、終身雇用だと思って、(実際にそうであったが)気長に勤めに出ていました。しかし、最近は一部上場といえども厳しい経営難に遭って、リストラをされる社員も多く、またリストラをされないまでも、定期昇給はフリーズされ、ボーナスカットは当たり前の世界になっているようです。

経団連としては、今回の法改正で、会社としては、若手新入社員の採用数に影響が出る可能性は否定できないとコメントしている。いったい実態はどうなのか、近くにいるメーカーや商社、コンサルタント、流通業などのサラリーマンに色々聞いてみました。

あるメーカーの人は、むしろこの話は、逆手にとって、今まで経験あるシニアを、新入生程度の給与でこき使うのには丁度いいので、かなり大勢の人が現場で働いているそうです。特に海外プロジェクトなどは、急に新入生や若手を使おうとしても、中身に難しいところもあり、手慣れたシニアを現場に派遣するケースが多いそうです。

問題なのは、その様なシニアが増えすぎて、それを管理監督する中間管理職が足りずに、困っているとか、仮にいても、ベテラン社員ですから、40代くらいの管理職では管理しきれない面もあるようです。只経営者としては、このような法律は色々と言い訳のために利用出来るという面もあるようです。但し仮に安くても、その人たちを使える職場があるというのがあくまで前提ですが。

デパートの外商に努めていた人が定年で、いわば出向という形で、都市銀行のフロアスタッフとして、店に立っているケースなどもあります。彼の場合には、実質はデパートからは定年扱いで、体の良い派遣社員的な形で、銀行で仕事をしているようです(現場労働者に近い仕事)。それでも本人は働いて給料をくれるだけで有り難いとのこと。ちなみに奥さんはある商社の食堂でパートタイマーとして働いています。

逆に若手でエンジニアリング会社勤めの課長クラスの人は、こんな制度が出来たから、65歳まで首にならなければ働けるので、家のローンを35年で組んだとのこと。70歳くらいまでローンを払い続けるつもりなのか聞いてみたが、前倒しで返済するので、何とかなる?!と言っていますが、まず無理でしょう。そのほかに、国の年金も当てにならないので、民間の個人年金で、終身が良いのか、それとも70くらいで切るのが良いのかなど検討していたようですが、先行きが全く不透明なこの年代の方は、結構60歳以降の生活設計が大変で、何とも設計のしようがないというコメントしか出せませんでした。

言えることは、前回も書きましたが、現在の世の中が、まさに曲がり角で、人口問題や経済問題など、「家族」として生きて行くために、単に政府に頼っても、当てにならず、所詮最後は自己責任で生きて行かねばなりません。従って、現役の時代は何とか飯が食えても、50代、60代、さらに70代まで、どうやって生きて行くかを、自分で考え準備しなければならない時代になっているのだと思います。

若い方は、少なくとも40代になったら、50代以降の自分の飯の食い方をどうするか、現役で仕事をしながら、考える必要がありそうです。例えば、現在従事している仕事の延長線上で、何か資格を取るにしても、エンジニアであれば「技術士」の資格を取るとか、語学の検定を受けておくとか(英語は勿論、出来れば2カ国語以上)、「中小企業診断士」の資格などは、定年後であっても、国際機関(世銀、アジア開発銀行、欧州開発銀行、国連関連など)や日本のJICAなどでも活用は可能だと思います。

いずれにしても、こうした準備をしっかりしておけば、それこそ「何とかなる」スタイルで行けるにしても、「何も考えていませんでした」では済まされないようです。

ある大学の3年生が、「埼玉の信用金庫に勤めが決まったが、自分としては海外に出てもっと色々な仕事がしてみたい。でも無理でしょうね?」と言うので、そんなことはない、信用金庫といえばまさに相手は中小企業。そことの付き合いから、どんな業種で、何が問題で、等々、データが宝の山ほどあるはず。それを自分ものにして、さらに自分で、経済分析や財務分析の勉強、ODA、輸出信用などの援助や金融関連の知識を身につけ、当然語学は勿論仕上げておく。それだけのことを、数年もかければ、20代後半か遅くとも30代前半には、国際機関で働ける中身は出来るはずと勉強資料を差し上げて、励ましておきました。

それに加えて、最近では海外で、会社としてだけでなく、個人で海外の企業に雇われて仕事をする方も大変増えています。特に量的にはアジアも一つの大きな職場という考え方はますます重要ではないでしょうか。

私の友人でもタイやマレーシアなどで仕事をされている方や、定年後日本よりよほどアジアの方が生活しやすいということで、アジアで年金生活を楽しんでおられる方も多くおられます。

やはり大切なのは、自分で色々と道筋を立てて、それを実行に移すことが初めの第一歩かと思います。人生中々計画通りには運ばないのが当たり前ですので、だからこそ、少しでも考えて計画を立ててくことが重要かと、自分のことは棚に上げて、申し上げておきます。

現在、TVでやたらと年寄り特集をやっていますが、その中で、私がおもしろいというより、ご立派というほかないご夫婦の話を最後に書いておきます。

その方は、70代後半で、親は戦前、豪農でしたが、戦後農地改革でほとんど土地を取られ、貧乏生活を強いられた。自分がサラリーマンになって、とにかく貧乏はしたくないと思い、且つサラリーマンは給与以外金が入ってこない、ならば出るを押さえるしかないということで、初任給1万5千円の中から、2千円を必ず貯金して、定年退職まで、貯金をし続けたそうです。TVレポーターが預金通帳を総計すると、現在は7千万円近く現金があり、そのほかに不動産を、自分の家だけでなく、地方の駐車場とか色々お持ちのようでした。

そこで奥様に相談し、「自分としては、子供たち3人(息子と娘二人)になにがしかのお金を残してやりたい」と相談すると、奥様は、「あなたは間違っているし、考えが古い。世の中、大方の年寄りは、金があれば、楽しく使って生活を楽しんでいますよ!」と言う。加えて、「仮にお金をやっても、子供たちは色々紛争の原因を作るようなものです」と言われました。

ごもっともです。そんなにお金があるのなら、奥様に半分で良いから、現金を渡して、「どこにでも好きなところに遊びに行ってらっしゃい」とでも言ったらどうかと、お金の蓄えのない江戸っ子と致しましては、人様の懐で余計な意見をつぶやいていますが、ほんとに世の中ご立派な方がいるものだと感心しております。若い方は時間との関数ですから、今からでも遅くありません! がんばって色々考えて見てください。