アルメニア人の経理

最近の日本も含めて、世界のあちこちで実際に体験したしつけや、教育に関することを振り返ってみると、別に世界のどこの国でも、文化や言語の違いはあっても本質論は少しも変わらず、良いことは良いというのは時代や文化の違いではないということが分かる。

私の経験によると、中近東では、経理はアルメニア人というのが相場のようだ。これが国民性なのか、小国で人様に信頼されなくては生きてゆくための職も得られにくいということなのかは分からないが、事実、私の勤務経験があるベイルートでもバグダッドでも、経理担当はアルメニア出身のお嬢さんだった。

バグダットの経理担当のお嬢さんと新任の支店長とのやり取りで、支店長がお嬢さんに毎日の小銭の出し入れに使う小型の金庫の鍵を渡す際に、「これをあなたに預けるので、ここにサインしてください」とお願いした。お嬢さんは「分かりました。サインしますが、同じ鍵をお持ちの支店長も同じ所にサインしてください」と言った。経理担当者として、まことに立派でかつ正しい発言だ。支店長は気の強い女だとか、ぶつぶつ言っていたが、やはり経理担当者はかくあるべしということだろう。

日本の事務所でも、女性の経理担当者はなかなかしっかりしている。これも訓練と信用という重要な要素がかかわってくるからだろう。

私は海外出張でタクシーに乗ることも多いのだが、領収書をもらうというのがなかなか結構大変な手間なのだ。日本のように自動的に領収書が出てくるようなシステムならいいのだが、へき地に行くとそうもいかず、市販の領収書に自分の会社の名前と金額を書かせるのが相当な手間になる。しかも、運転手と言葉が通じない場合は、ホテルのカウンターまで運転手を引っ張っていって、「かくかくしかじかなので、領収書を書かせてくれ」と頼んで、タクシーの領収書を手にするまでに大変な時間と労力がかかる。

私の仕事仲間で、どんなときでもちゃんと領収書を手に入れている人がいるので、「あんたは立派だね。よくこまめにちゃんと領収書をもらってるね!」と言うと、彼は「私だって面倒ですよ。でもね、帰って清算する時に、うちのお嬢さんが怖いんですよ。時間はかかるし、怒られるし、それならここで時間がかかっても、未だこちらの方がましですよ!!」だそう。

経理ご担当のお嬢様方、決して手を緩めてはいけません。男はいつも面倒臭がりで、いい加減ですから、金の管理は緻密にしっかりやってください!