仕事の仕方あれこれ(女性の扱い)

男女雇用機会均等法が1985年に施行されてから約四半世紀たち、その間1997年にはいわゆるセクシュアルハラスメントに関する項目が追加されたりして、以前に比べれば、女性に対する雇用機会は開かれているように見えますが、実際にはまだまだ日本では男社会のシステムが抜けていないのが現状です。

女性が結婚し、妊娠、出産となれば、産休、育休が取れるのはルール上、当たり前になっている社会ですが、実際には会社としての扱いが問題で、育休後の復帰に関しては、同じ場所には戻れないとか、出産時には課長職であった者が、復帰後は平社員扱いになるなど、女性としては不満が残る問題が多いわけです。

また、最近では高齢出産年齢に達し、子供がほしいということで、未婚でも、全く未知の男性から精子を提供してもらい、出産しているケースが増えてきたそうです。

このようケースでの倫理や法律問題は、大変問題ではありますが、この議論は別にするとして、今回は、働いている女性を、男性社会である日本でいかに扱っているのか、あるいは女性にどのように仕事をしてもらっているのか、男性社会の、男性から見た女性の仕事の扱い方から紐解いてみたいと思います。

かつては、会社で女性は和文と英文のタイピスト。男性の補助要員としての女性は、商業学校出の女性がほとんどでした。仕事としては、朝のお茶くみ、コピー取り、雑用、それにソロバン、伝票処理などでした。昭和30(1955)年代半ばから後半になって、短大女子が当時のエリートとして入社してきました。それぞれの時代を背負って皆さん大変優秀な女性たちが多かったことを覚えています。

特に印象が深かったのは、水戸商業を出て、趣味は弓道、ソロバンは1級と、まさに水戸藩の女性を代表するような方でした。私は計算が下手で、長たらしい数表の足し算が何回やっても合わず、10回やって平均値でも出そうかと冗談を言ったところ、そのお嬢さんが、ちょっと見せて下さいと言って、じーっと表を上から下に一回嘗めるように見て、答えはこれですと、鉛筆で書いてくれました。暗算で、一発正解です。さすが1級です。字もきれいで、仕事は早い、自分の宝物は、祖父からもらった「白い矢」だそうです。

又、お茶くみに関してはこんなエピソードがあります。当時は戦後間もない頃で、組合運動も盛んで、女性も左寄りの言動をする方も多く、女性同士で「お茶くみは止めましょう運動」を展開していたそうです。でもある女性は「お茶くみだーいすき人間」で、当時、なんで女がお茶を入れたらいけないのか、理由が分からなかったそうです。そんな古き良き時代もあったようです。

その後、短大は勿論、大学や大学院卒の女性も入社してきて、ますます女性の活躍する場が増えてきたと感じていました。しかし、依然として女性の仕事は、男性の補助仕事が多かったというよりは、そのようにしか活用していなかったと言うべきでしょう。

私が中近東勤務から4年ぶりに大阪に帰ったときに、海外での女性の活躍ぶりは、中東の店や、欧州各国でも経験してきたので、限られた人数で多くの仕事をこなすためには是非、男性がやっている仕事を女性に単独で任せてみようと考え、まずは大阪の取引先の中小企業に研修と称して、私は見学かたがた、それぞれ女性に担当の企業を与えて、工場を訪問して、製品の製造工程から、輸出に関する打ち合わせなどを全部担当女性がやるのでよろしくと頼んで、結果も良かったので、ずいぶん社長さんからも喜ばれ、夕方には食事をご馳走してくれたりしました。

また、輸出保険や精算会社の処理など、必要に応じて、国内出張もざらで、一人で任せても、基本的な指示だけで、すべてこなしてくれました。下手な男よりよほど能力は高かったと思います。彼女は阪大工学部出身で、ドイツ語が達者で、結局日本男性はオメガネにかからなかったようで、ドイツ人と結婚しています。

また、海外からのVIPが奥さん連れで来たときには、女性を担当させて、食事にも着席させて、奥様の面倒を見たところ、次回にVIPだけが来たときに、家内からこのお土産を彼女に渡してくれと頼まれたと言って、仕事の助けになったことを覚えています。

その後、たった一年で東京に帰り、海外のODA仕事などをやりましが、このときも、短大出の才女がおり、育ちが良いのか、とにかくにっこり笑って、返事をして、仕事をこなしてくれました。海外から、大蔵大臣とか時には首相が電話をかけてきても、英語が達者なので、臆さず対応してくれ、実際の仕事でも、当時の通産省や外務省の企画官クラスの打ち合わせには担当者として出席し、また外国の首相夫妻の接待もお任せで取り仕切ってくれました。

とにかく、学歴の如何を問わず、日本の女性は、それぞれの時代で、家庭の躾と、学校でもまじめな勉強と相まって、ある意味で男社会のこの日本で貴重な戦力であることは事実です。問題はむしろ男性側にあって、これらの女性たちの能力をどう活かすかがあまり考えられていないのが、現時点でも問題ではないかと感じています。

もちろん、私のこのような経験はある意味恵まれた環境での話ではありますが、実際に結婚し子育てをしながら、苦労して働いている女性の話も聞きましたし、保育の問題や、女性の収入が一般的には男性より低いのも事実です。

その様な環境でも生きて行くためには、国や地方自治体が、自分たちのために、何にもしてくれてないと文句を言うのは簡単ですが、突き詰めれば、所詮最後は自己責任で生きて行かざるを得ないわけです。そうした覚悟というか自分の人生の責任というようなことを、現在の文化の中で、自分でしっかりと自覚をして上で、結婚も仕事も、子育ても考えて人生設計をせざるを得ないのが人生だと思います。何時の時代でも、大変なことは大変です。そんなに楽な人生はあり得ないという前提で、楽しく働ければ、きっと何らかの光は見えるでしょう。

私は以前、女性には失礼な「女子能力開発委員会」なる会で、人事部から頼まれ講演会をやったことを書きましたが、「男子能力開発訓練会」でも作りたい今日この頃です。日本の会社の皆様に、是非女性の能力をもっともっと使って、良い仕事をしてもらいたいものです。