パナマ市の観光と環境(アメリカによる開発とその後始末)

JBICの依頼を受けて、パナマの都市インフラの話で、初めてマイアミ経由パナマに出張したときの話です。当時のパナマ市の市長さんは女性で、さすが陽気な中南米、昼晩宴会で、その合間に、都市ゴミ最終処分場、パナマ湾のヘドロの海や、観光開発と称して、軽飛行機で小一時間の地方などを見学して回った。

見学して最初に感じたことは、世界的なインフラであるパナマ運河もあり、また米国にも近く、米国が上水道を建設したと言う割には、市の中央を流れる川に下水を直接流し、そのヘドロが海にたまりにたまって、海岸線を散歩していても匂いがきつい。日本の大使公邸にお呼ばれしたときも、このヘドロの海は何とかならないでしょうかと相談された。また、都市ゴミも収集運搬はやるが、直接最終処分場に投げっぱなしで、地下水汚染は勿論、その汚水が海に流れ出しているのは明白でした。

そのような基礎インフラの状況の中で、美しいパナマの観光開発をということで、日本もJICA案件で、観光開発の調査をやっていたようです。私にすれば、観光開発も大事だし、外貨稼ぎにもなるが、それ以前に都市の上記のようなインフラを最低限でも整備しなければ、折角の美しいパナマも、海岸線のヘドロの匂いで台無しだし、地方の荒らされていない、美しい海岸線にしても、そこへのアクセスが、軽飛行機だけでは、大勢の観光客を呼び寄せるには心許ないでしょう。

米国が上水道を作ったなら、米国らしく、下水道もついでに造ってほしかったですね。川に下水を直接流せば、時を経ずにヘドロがたまるのは時間の問題であることは承知のはず。よその国なら下水は後回しと言ったかどうかは知りませんが、折角の海辺の日本大使公邸の庭も、ヘドロの匂いには勝てず、一緒に行った大阪の新空港の海底作業にも関係したことのある技術屋さんが、海水は色々な意味で浄化作用があるので、渦巻きポンプと称する大型のポンプで、ヘドロをかき混ぜるだけでも結構匂いは軽減されるはずだと言っておりました。

その後彼は大阪に帰って、関空のドレッジングでこれらのポンプを活用しようとしておりましたが、とにかく技術屋さん魂で、早く自分で何か開発したいとい気持ちが先走っていたので、仕事が取れるまでは自分の金はつぎ込むなとアドバイスはしておきましたが、結局自己資金(娘の大学進学資金)を投じて、結果、仕事にならなかったというお話です。

その後、JICAでも下水や環境案件でパナマの開発もやっているはずですので、今度行くときには、海辺の散歩が出来るようになっていることを期待しています。

似たような話は、どこにでも転がっていて、ブルガリアのロム市に行ったときも、市長さんがTVのキャスターを呼んで我々のプレゼンテーションや、交渉事をつぶさに映していました。現場の見学になったときに、「ところでこのプロジェックトは何時からスタートが出来るのか」と、私のそばに寄って、小声で聞くので、「心配はない、あなたの次回選挙前にはスタートが出来るはずだ」と答えたら、にっこり笑って「どうして選挙との絡みが判るんだ?」と言うので、世の中、日本でもこちらでも一緒ですから、ご心配なくと、訳の分からない返事をしておきました。

クロアチアやセルビアに行ったときも、市長さんにゴミ処分場の案内をしてもらったときに、必ず地場のTV局のカメラマンと、英語を話す若い女性のインタビュアーをセットで連れて回っていました。こちらも市長さんの悩みも判っているので、皆さんが毎日出しているゴミを、目の前から集めて谷間に捨てているだけでは、決して事は解決しません。環境破壊が進むだけなので、電気や水道と同様に、金をそれなりに掛けて、インフラを整備することが必要であるということを、市長さんの代わりに、サポート演説をしておきました。

あの辺では日本と違ってマスコミが氾濫していないだけに、TVの影響はかなりあって、市長さん初め政治家などはマスコミの使い方は中々上手だという印象を受けました。事実、セルビアでセミナーをやった時も、朝一番のプレゼンテーションで私が、日本のODAは自助の努力が原点なので、金だけもらっていい加減なしごとをしてもだめで、しっかり自覚を持って日本のODAを使って下さいという趣旨の話をしたら、昼にはもう放映されていて、これをアメリカ大使が見て、早速日本大使に電話して、おたくのミッションは良いことを言ってくれた、ここの人たちは援助慣れしていて、自分で努力をあまりやらないので、あのような話は大変結構と、ほめられたと日本大使から連絡があったといったエピソードがあります。

世界中どこの市長さんと言わず、町も村も、この単位での生活圏のインフラ整備等が、大型のナショナルプロジェクトとは違った毎日の生活に密着した重要な生活基盤なので、これがバランス良くしっかりしているとことが住みやすく、人間が生きて行く上で重要なポイントであるはずです。