仕事の仕方あれこれ(職種)

どんな会社に入っても、何かの仕事を与えられます。それが金融業での窓口業務であったり、製造業での工場勤務であったり、サービス業の接客係であったり、何でも良いのですが、自分の与えられた仕事とは一体どのような範囲なのか、日本人は一般にあまりその様な事を深刻に考えないと言うより、考える必要がないと言った方が正確かも知れません。

何を言っているのか、訳が分からないでしょう。要するに、雇われるときにあなたはこういう業種の、こういう職種で働いてもらいます、といって契約をするケースは新人ではあまりありません。一般職か総合職かとかいった大きなくくりで分けるケースはありますが、日本の企業文化としては、一人一人が言わばピラミッド型の組織の中で、大雑把な円形の中の仕事をして下さいと言われているようなもので、お互いの仕事の円がダブることもあれば、その間の隙間が空いていることもいっぱいあります。

実際に仕事をするとなると、その隙間の仕事は誰がやるということは決められていないケースが多く、仕事の出来る人が、その隙間を埋めて、全体として、隙間がないような仕事を会社全体としてやっていると考えられます。だから新人は、大分隙間があるな?と思ったら、チャンスだ!自分の仕事だけでなく、隙間の空間は自分が埋めてやるといった発想が必要です。

俗に、会社では仕事が出来る人の所に、この隙間の仕事が回ってきます。だから出来る人は何時も忙しくなるという理屈になりますが、これは色々なことを覚えたり、仕事を自分で取り込んでやる事によって、スキルがますます増してくると考えれば、こんないい仕組みはありません。

世界中どこもそうだと思ったら大間違いで、欧米、特に米国などでは、こうした隙間が少なく、個人の仕事が、まるで煉瓦を積んだように決められているので、下手をすれば他人の領域に手を出すことにもなりかねず、トラブルの原因にもなります。

こうした仕組みは、単一的なマネージメントをやる仕事には向いているのかも知れませんが、少し高度な判断業務を伴うようなケースは、日本的な仕組みの方が柔軟性があって良いと思います。ただし、その場合、一人一人のレベルが可なり高くないと、成り立ちにくいです。

これからの方は、海外で仕事をするケースが多いと思いますが、日本的な組織や仕組みで仕事をしているケースは、欧米は勿論、アジア地域でもむしろ少ないと思った方が良いと思います。従って、海外で日本的仕組みで仕事をする場合は、よほど現地のスタッフの教育や仕組みへの理解などをたたき込んでおかないと、何でもないことがトラブルの原因となって、仕事の効率は勿論、士気にも影響しますので気をつけて下さい。

実際に私が経験したのは、ベイルートに勤務していたときに、現地雇用の優秀なスタッフたちが、支店長に、job classificationと昇格についてはっきりした方針を出すように問い詰めたことがあります。彼らは、何時も日本人の下でスタッフとして働き、日本人は交代するが、彼らはいつまで経っても、そのセクションのスタッフでしかない。

私としては、彼らの要求は当然と思っていたところ、彼らからも交渉の窓口を支店長ではなく私にすることを了承したので、本社の人事部などとも交渉し、ベイルート支店としての、現地スタッフの職種や昇格ルールを作り、人事制度を整備した経験があります。

比較的最近では、トルコのアンカラの店にお邪魔したときも、現地の博士号を持つスタッフが似たような話をしていたので、日本に研修旅行があるというので、その時に社長に直接話をした方が色々経験が出来て面白いので、やってみなさいとけしかけておきました。彼は東京で社長には会いましたが、ほんの数分で面談は終わりになったようです。現在は海外店での、現地スタッフの昇格や、重要ポストにも道は開けているようです。しかし、まだまだ、現地スタッフから見ればもの足り無いのが現状でしょう。

アメリカの有名なエンジニアリング・コンサルタントのケースは、日本に現地法人を設置する事に関して、アジア担当の営業責任者に色々アドバイスして、彼自身は必要性を感じていたので、本社に交渉したが、みな反対はしないが、最終決定には至らないと言う。

では、一体決定権は誰にあって、決定するためには誰がどこに上げれば決定されるのか聞いてみても、結局は会社としては縦割りで仕事をしているので、各部門がやるとしたら、それぞれ必要に応じて、それぞれの部門で、支店なり現地法人を作るという発想なので、会社全体としての現地法人を作るという発想そのものが存在しないという事でした。結局は、CEO等のトップがその必要性を決断しない限り、事は進まない仕組みと見ています。

先日、NHKでアイリスオーヤマという会社の商品開発のシステムを紹介していましたが、週一回、社長が各部門のスタッフと共に会議に出席して、商品開発のプレゼンをやりその場で白黒を付ける現場を、放映していました。社長曰く、普通は下から、順に、責任者の決裁を得て上に上がるのだが、それでは、間違いなく良いアイデアも途中で没にされる可能性が高いので、直接トップが聞いて決断していると発言していました。

まさに、組織の弱点をいかに経営者がアイデアでカバーする事が重要であるのか、このような単純な話が結構実行されておらず、相変わらず、社内では下から順に上へという仕組みが、無思考に行われている所は多いはずです。新人でもこのような単純なことを「不思議だ」とか「おかしい」という発想を持ち続けることが、自分を磨くことに繋がると考えて見て下さい。