人の寿命(クリスマスと年の瀬にあたって)

最近、中近東で勤務していた頃の仲間と会ったときに、我々年寄りが集まると健康で長生きの話か、孫の話しか出ないということでした。そこで、以前バグダッドに勤務していた時代に、現地の年寄りが、「昔は、人間は9百年くらい生きていたようだが、近頃は皆早死にしてしまうようになった」とつぶやいていたのを思い出した。その話はある大使から、旧約聖書に書いてあるということを教えてもらっていたので、一体人間はどのくらい長生きをしたのか、旧約聖書を引っ張り出して調べてみました。

私はクリスチャンではありませんが、中東はまさにユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった、言わば旧約聖書を共有する聖典の民たちが生きてきた地域です。それで聖書だけは、英語本やフランス語版、それにあまり教会系の日本語は辛気くさいので、岩波文庫版などを柄になく持っていました。

旧約聖書の初めの方の「創世記」に書いてありました。面白いので少し、過去のアダムやノアの洪水で有名なノアさんがどのくらい生きたのか、又なぜそんなに長生きをしていたのに、今のような100歳レベルになったのか、紐解いてみました。

  • 創世記

旧約聖書の第1章に神が天地創造をしたことが書いてあり、1週間かかって、光や昼と夜、神に似せて人を作ったり、鳥や獣も作り、人の食糧用として、種から出来る植物を作った。

2章では、こうして7日目に神様が、仕事の完成を祝って(実際は疲れたのか?)休みにした。これが日曜日。そして東側にエデンの園を作り、人を住まわせた。人が1人でいるのは良くないということで、色々な動物を試したが、人のアシスタントにふさわしいものが見つからなかったので、その人を眠らせ、彼の肋骨を1本取って、その場所を肉でふさいだ。神はその肋骨から1人の女を作り出した。

3章では、エデンの園で、蛇にだまされて、神からそれだけは食べては駄目と言われた禁断の実を食べてしまい、神に見つかった。神は怒って、お前たちが子供を産むときには苦しめとか、自分の食い物を作るために畑を耕せなどと言われ、結局エデンの園を追い出されてしまう。

4章で、女エバ(イブ)が2人の子供を産み、その後孫やひ孫と、イブの系列で子孫が増えて行く。

5章で、アダムの系図で、彼が130歳の時にセツという子を産み、その後800年生きて、結局彼は930年生きて死んだ。その子セツは105歳の時にエノスを産み、その後807年生き、912歳で死んだ。その後の系列で、レメクがあの箱船で有名なノアを182歳で産み、そのノアが500歳の時に3人の子を産んだ。

6章で、天使の結婚というテーマで、人間がこのようにどんどん増えて娘たちが生まれてきた。神の子たちが人の娘の美しいのを見て、その中の好きな娘を選んで妻にした。そこで神(ヤハヴェ)は、「私の霊は何時までも人の中に留まれない。なぜなら、人といっても所詮肉だから、だから人の命は120歳と決めよう」と言って、その様になった。勿論その後でも結構長生きした人たちはいたようです。

7章で、かの有名なノアの方舟の話が出てきます。神は人が増え、悪が横行するようになったために、人を作ったことを後悔し、自分が創造した人や動物を、この地上から絶滅させることを実行した。(有名なノアの洪水の話)

その際にノアは神ヤハヴェの恵みを受け、箱船を造るように命じられ、且つ色々な種類の動物や鳥を雄雌一対ずつを船に乗せるよう命じられ実行した。彼らが船に乗ると大洪水が起き、40日間続き、箱船以外の地上のすべてが絶滅した。その時ノアは600歳で、洪水の後350年生きて、950歳で亡くなった。

以上が「創世記」の初めの部分の、人の寿命に関する抜粋ですが、色々と疑問が出てきます。

そもそも神の子たちが人の娘が美しいから妻にして、それで、人といっても所詮自分が作った女(肉)だから、寿命を120年に縮めてやれというのは、独断と偏見ではないか?

しかし、色々な本を読むと、要は、人間なんて所詮、大勢いれば悪いことをやるやつが増えてくるので、そんなに長生きをさせる必要がないと神様が考えたと思えばそれも納得。

しかし、イエス・キリストだって、神と人(マリア)の間に出来た子として生まれたわけだから、それを神として、あがめるのはおかしい?という意見もある。モハメッドは、キリストが自分と同じく預言者であるというなら分かるが、神であるというのは上記の理由で許せないと言っています。

それぞれ言い分は色々あるでしょうが、日本の古事記や日本書紀と同じように、旧約聖書も、多分口伝で昔から伝えられた話を、司祭や宗教関係者などが整理して、編集したものと考えられているようですので、言ってみれば、神から人へのアドバイスが伝言だと考えれば、まあそんなものかと思えなくもありません。

寿命について申しあげますと、最近の「ヒトゲノム」の研究者によれば、人の寿命は色々な動物の中では長生きの方で、その長さ(寿命)は、ヒトゲノムの大きさに関係するようで、多分、ノアの時代に一度人間どもを絶滅させようと考えた神は、もしかして、ヒトゲノムの一部をカットして、寿命をコントロールして、現在のような100歳前後にしたのかも知れません。

クリスマス時期でもあり、年末年始に当たって、一体人とは何かを、このような聖書や古事記にさかのぼって原点に返って考えてみるのも、たまには良いのかも知れません。人間は救いがたいという結論になるのか、捨てたものではないという事になるのか?

一人一人の人生ですから、じっくり考えて、神の決めた120歳までがんばってみましょう。