信用と信頼

楽天の優勝おめでとうございますと言おうと思っていたら、御本家の「楽天市場」が、馬鹿げた話題になっています。折角子供が良い宣伝をしてくれたのに、これでは親の不始末で、台無しですね。

そもそも、あのシステムそのものが、昔風に言えば、縁日やお祭りの屋台の所場代取りの取り仕切り屋みたいなもので、どう見たって、仕切り屋が、それぞれの屋台の商品の責任を最初から持つつもりも無ければ、持てるはずもない。

だから最初から、場所を借りにやってくる物売りたちは、中には、やらずふんだくりの商売をする悪いやつがいるのが当たり前という前提で、事を進めるのが常識のはず。それでこそ、この「市場」は安心してものを買って頂けますという、お客さまに信用してもらい、客の信頼も勝ち得て、市場が繁栄するというビジネスモデルなのではないでしょうか。

社長の説明では、元値があんな高いものであると思うお客はいません等と説明していましたが、言い換えれば、お客様の自己責任で買って下さい、「だまされるやつが悪い」という風にも聞こえます。

そういう私がネットで買い物をしたことがないのでは?と言われるといけないので、色々好奇心旺盛で且つあら探しの大好きな本領を発揮して、色々試してみています。

熊本にあるベビー用品屋で赤ん坊の衣料品を見つけたので、発注しようとしても、「サイズと色を指定して下さい」という指示が出て中々買い物カートに入れない。どう見ても、ネットの設計が悪いのではないかと思って、連休中だったので、メールで事細かに、「注文をしたいのに、注文が出来ない、もしかして、御社はネットでは売りたくないではないか、何か事情でもあれば説明して下さい」と打ったら、休み明けに早速メールで返事が来て、「ホームページの設計が悪かったので早速直しましたので、ご注文をお待ちしております」とのこと。

それで発注して、ものが送られ、決済もして、その後更に、メールで「今回のご注文有り難うございました、何かお気付きの点でもあればお知らせ頂ければ私どもの励みになります」と来たので、「御社のミスがあったことに気付いたので、この商品を買うことが出来たのだ」という経緯を説明して、「お客を大切にして下さい」という結語で終わりにしました。

このやりとりでも、ネットで問題を指摘された人と、それが縁で買ってくれた客が、このお店では一致したのか。いや、多分、ホームページと販売とは全く無関係に、別の担当がやっているのでしょう。普通の小売店なら、顔が見えるので、又あのうるさいじじいが来たとか応対が出来るが、このようなシステムでは、まず考えていないでしょう。

しかしネットでも、このようなケースなら、両者は繋がるはずです。もし私がこのような立場なら、不備を指摘してくれたお客に、菓子折のひとつ(昔風ですね)とか、子供の100円の靴下一つでもおまけを付ければ、多分お客としては大変満足するのではないでしょうか。でもそんなしち面倒くさいことは決してやるような現代ではないのでしょう。

また、これもベビー用品ですが、ネットで見つけて買おうとしたら、販売は全国の生協が行っていて、メーカーの直販はしないというシステムのようでした。

そこで、まず目的の品を指定し、決済の方に進むと、自分の属している生協の詳細を聞いてくるので、それを書くと、あなたの属している生協では現在はこの商品は買えません、と言う。ではどこの生協なら買えるのか調べると、他の生協の名前が数件出てくる。

面倒だからどこの生協でもメンバーになってやろうと思い、幾つかの生協にメールで申請したら、やれ資料を送るだの、電話で確認したいだのと言うので、面倒なのは止めて、自分の所属している生協のカタログ(何時もは食品等を注文している)を見ると、その商品が提供されている。

それで、ネット購買の登録が必要だというので、登録をして、その生協にログインすると、何ともお粗末なページで、所望の品の大項目にたどり着き、目的の商品を探そうと思ったら、なんと何千とある商品が、絵の表示もなく、価格と商品の名前だけが、リストとして載せてあるだけ。結局その商品の項目にたどり着けなかったし、確認のしようも無かったので、それでおしまい。別の商品を買いました。

結論を言えば、売る側からすれば、ネットだと簡単に売れるのではないかと誤解をしているわけで、私のようなしつこい客でさえ、到達できないような商品陳列をしておいて、買って下さいはあり得ない。むしろ買えるものなら買ってみろ!といったクイズ番組みたいな話でした。

あのホームページを作ったのがどんな人なのか? プロなのかアマなのか知りませんが、少なくとも商売する気があるなら、もっと買いやすいホームページを作る事をお勧めします。むしろ中小の個人商店で、網戸の修理などを地域限定でやっている所のホームページの方がよほど便利です。

ついでに、もう一つ。あのレストランのメニュー表示偽装も似たような話で、車エビなのか、バナメイなのかブラックタイガーなのかなんて考えて、注文はしていませんが、そもそも問題になったレストランなどは、皆一流のホテルやレストランで、元々信用のある名前の通ったところで、なぜ、あんなせこい事をやってまで客をだます必要があるのか分かりません。

しかし、車エビを発注したが、業者が違うものを納入したとは言い訳していませんので、社内で企画している部所では、当然確信犯で、分かってやっているわけですから、経営者も、現場の責任者も、みんな「安サラリーマン」をやっているとしか言いようがありません。

「上から言われたからやった」「お客が喜びそうなので、そのまま進めた」「大した問題ではないと思った」などと言う声が聞こえてきそうですが、いずれのケースでも「お客」という人間を「儲けの対象」としたのですが、一番やってはいけない「客をだます」ということを、たいした罪の意識もなしにやってしまっている人間(役員や社員)がいたということです。

最近は企業がコンプライス(法の遵守)などと横文字を並べて、最高学府を出た大人に対して、法律を守りましょうなどと研修でやっているようですが、おかしくないですか? 幼稚園の生徒や小学生でも、規則を守りましょうと教えられているはずです。

TV等では、食品表示法でどうの細かく規定するのが難しいとか、議論が華やかですが、こんな問題は、法で規制したって大局的にどうなるわけでもなく、所詮「日本文化」の問題で、何時の世にも悪いやつはいて、昔だってこのような詐欺師はいたでしょう。

しかし、このような一流企業が、詐欺師と言われても致し方ない状況では、これは「日本文化の喪失」と言わざるを得ませんね。一番怖いのはそこで、文化が喪失するということは、日本という国の根幹が失われるということでしょう。

これから日本をどうするかという時に、その根幹がどんどん失われていったら、国の滅亡しかないでしょう。一企業が潰れるとかいうのは、何時の時代にも栄枯盛衰は時の運です。しかし、国ごと沈没はあり得るのではないかと思わざるを得ない出来事ですね。

客の信用を一旦失ったら、その信頼関係を取り戻すのは容易なことではないということを、少なくとも日本の経営者は身にしみて感じて実行してもらいたいですね。会社の役員なんて、精々やって一期か二期でしょう。汚名は一生ついて回ると思ったら、とてもあんな馬鹿な事は出来ないはずです。

これは日本語以前の問題であり、日本語が通じないのではなく、相手を理解し、認めるという社会生活の原点が出来ていないことに原因が有るのではないかと思っています。これでは、消費者のために商品開発を進めても、本当に長期にわたってその消費者が、製造者のファンになってくれる日は遠いのではないかと思います。