礼儀正しい少年

税務申告の最後の日、税務署に向かうため、自由が丘から二子玉川行の電車に乗った。10時過ぎという時間が時間なので、車内は空いていた。

ドアの近くに、リュックを背負った年配の女性が座っていた。そこへ、手に傘と菓子折らしい手荷物を持った15~16歳の少年がやってきて、母親に頼まれて親戚などにお見舞いに行くような雰囲気で「この電車は等々力(とどろき)に行きますか?」と質問をした。女性は丁寧に「二つ目の駅ですよ」と答えた。

その後、電車が等々力の駅に近づくと、「ここですよ」と女性に言われ、彼は「ありがとうございました」とハッキリとした口調でお礼を言い、深々と丁寧にお辞儀をして、電車がホームに滑り込むとドアの近くに進み、降りる準備をした。

ドアが開くと同時に、彼は改めて軽く二度、その夫人に向かって会釈をしてからホームに降り立った。さらに、電車が発車してからも、彼は直立不動の姿勢で走り去る電車に向かってお辞儀をしたままでいた。

たったこれだけのことであるが、今時の若者でこんなに礼儀正しい仕草を最近見たことがなかった。別な意味で、親の顔を見てみたかった。誰にどのように育てられたのか。日本にも、まだこんなしつけをされている人物がいることが分かっただけで、気分が晴れる一日だった。