社長と副社長(1)

どこの会社でも社長や副社長がいる。しかし、この二つの役職は大変な違いがあるらしい。

私は一部上場企業の社長や副社長になったことがないから判りませんが、なった方々の愚痴を聞くお相手は何度もしたことがあるので、多分そうなんでしょうね?と他人事としておもしろおかしく聞いて差し上げる。

  • A副社長のケース

あるとき、副社長から直接電話を頂いた。「君、昼はあいているか?」「あいてますよ。何かご馳走でもしてくれるんですか?」「勿論。近くのホテルのフランスレストランに予約を入れておいたから、そこで直接会いましょう」とのことで、今日は極上のステーキをオーダーしようと、相手の用件などそっちのけで、楽しみにしていた。

お会いして話を始めると中身は単純で、「役員会なんて、ある意味虐めの会みたいなもんで、業績が悪いといってなじられ、参るよなー。何も好きで業績を落としているわけでもないんだが…」と言って、くたびれたような顔をしているので、「副社長! 良いじゃないですか。どうせ役員なんて、同じバスに乗って、同じ方向を走っているわけで、副社長一人が仮にがんばって、バスを方向転換させようとしても、無理なんですから、楽しくやりましょうよ! やることはいっぱいあるし、副社長は半期半期なんて考えないで、それは部下が考えてくれますから、少し気の長い話を考えて、先行き金になるような話をやっていれば楽しいですよ」と慰めたつもりの発言をしておいた。

「君は良いよなー。いや、有り難う。君の話を聞いているとなんだか、すこし気分が晴れるような気がしてきた。ところで海外で何か、新しい提案案件でもあるのかね?」と聞かれたので、「ありますとも、なんならすぐにでも取りかかって、一緒に遊びに行きましょう!!」 ひどいアドバイザーですね。高い飯をおごってもらって、いい加減な慰めを言って、その上海外に遊びに行きましょう…。私は大変高級なアドバイザーだと思ってやっていたのですが。

実はそれからまもなくして、中国のある案件の提案書を作って、これを客先にプレゼンテーションをやりに、広州まで、A副社長と、私ともう一人エンジニアと一緒に出張した。

広州で、現地の店長の招待で、おいしい潮州料理をたらふく食べ終わって、帰り道で、支店長が「村野さん、うちの店あまり儲かっていなので、結構あの店高いので、副社長が少し持ってくれないかな?」と言うので、いきなりでっかい声で、「副社長、ここの店長が貧乏なんで、持ってくれないかって言ってますがどうします?」 支店長慌てて、そんなでっかい声で言わないで、そっと聞いてよ…、もう遅い…、副社長が「良いよ! 俺んところに回しといて」で、一件落着。

仕事が終わって、我々は香港まで飛行機で行き、且つ香港で一泊して、香港料理を食べて帰国した。A副社長はまじめ一方でしたから、広州から深圳経由香港に入り、当日の飛行機で帰国された。

帰国後、「今回の仕事もそうだが、一緒に旅が出来てとても楽しかったし、あの潮州料理もおいしかったねー。やはり君の言うとおり、長期の仕事は先が長いから楽しみも長くなって良いね! 有り難う」と礼を言われた。

A副社長! ほんとに悪いアドバイザーでしたが、今は私の予言通り、副社長の部門は儲かってしょうがないようですよ! あの世でお金が使えるのかどうか知りませんが、私がそちら行ったら、またご馳走して下さい。よろしくお願い致します。地獄の閻魔さんの話ならいくらでも対応してあげますが、天国は私としては苦手ですので。本当にお世話になりました。ご冥福をお祈り申しあげます。