サラリーマン生活の第一歩

4月も間近でこれからサラリーマン生活の第一歩を歩き始める方々もおられると思います。私自身は学生時代から勤め人のような環境も経験し、それから会社に入ったのが昭和35(1960)年で、それから半世紀以上も経ち、最近の、若い方の仕事ぶりなどを見ていると、社会環境は当然変わっていますが、善し悪しは別として、本質的には何も変わっていない部分もかなりあると感じています。そうした経験と照らして、サラリーマン生活の色々な局面を、検証してみたいと思います。

  • 「仕事のやり方を変えなさい」とマネージメントコンサルタントは言っていますが?

ごく最近、NHKのラジオを聞いていたら、あるマネージメントコンサルタントの女性社長が、こんな話をしていました。

最近相談が多いのは、「我が社はどうも残業代がかさむので、何とか良い方法はないか?」というのです。その社長さんの答えは単純で「昔は仕事の出来る人が一所懸命残業もしながらがんばって、会社の業務をこなしていた。しかし、そんなことをやっていたら、幾ら残業代を払っても膨らむばかりなので、朝は一斉に仕事を始めるが、夕方になったら、遅れている人の仕事を、みんなでカバーしあって、時間までに何とか仕事を終わらせるようにすれば、誰も残業をしなくてもすむし、会社としても残業代が節約出るのです。」との事でした。それに加えて、「うちの会社でもそのようにして、毎日残業無しで仕事をしています」とのことでした。

私の答えは「ノー」です。そんな簡単な話では無いと思います。是非その社長さんに、商社なりメーカーなりの課長になってもらって、残業無しの事務所経営を見せてもらいたいですね。そんな単純な話で済むような仕事、例えば昔の内職のような袋貼りとか、単純労働者が、穴を掘る仕事とかであっても、当然能力や体力などの違いもあるはずで、仕事の出来る人が、遅い人の分を夕方皆でカバーして終わらせる。それ自体は極めて日本的経営の良いところをですが、当然その場合は、能力ある人が余計に賃金を出来高でもらうという事でなければ、経済原則に反してしまいます。

残業無しで済ませられるなら、それに越したことはないでしょう。しかし問題はその残業を、その日のうちにしなければ、どうしても駄目なのか?という、「残業」の中身の問題です。例えばレストランとか百貨店などのケースは閉店時間が決まっていて、そのあと、商品整理や売り上げ処理など、多分毎日やっておかねばならない仕事があって、それを終えて帰宅となるはずです。このようなケースは比較的分類がしやすいのかも知れません。しかし、大方の事務所仕事や工場仕事の場合、仮に数人のグループで、ある仕事を分担したりして進めている場合、それぞれの人が抱えている仕事はやればきりがないくらいに仕事というのはエンドレスになるのかと思います。要は優先順位の高い仕事を先にやって、適当に区切りをつけて、一日の仕事を終わらせているのが、普通のサラリーマンかと思います。

  • 新入生に期待する能力

日本企業の場合、多くは「一般職」とか「事務職」とか「技能職」とか、かなり幅のある曖昧な形で雇用しますが、アメリカのケースのようにjob classificationが非常にはっきりしているところでは、単純にやる仕事が決まっていて、逆に余計なことやると、それはおまえの仕事ではないと叱られるケースも多いと思います。

日本は基本的に、雇用する場合、能力がある一定以上あるという前提で雇用し、そして、「課」とか「室」とかいう仕事の基礎単位グループのなかで仕事をするケースが多いはずです。

その場合、仮に重要だからといって、一流の大学のトップから人選をして集めて、ひとつのグループに入れて仕事をさせると、そこの中で、上20~30%は仕事をするが、後の40%くらいは普通の人、残りの20~30%はあまり仕事をしない人というような、階層が出来てしまうというのが、人間が固まりで仕事をする場合の、普遍的規則のようなもののようです。

先日開発コンサルタントの仲間と話をしているときに、我々の仕事は、グループとして農業技術士、環境、IT関連、調達、設計等、ジャンルの異なる人がひとかたまりで仕事をするケースが多いのですが、その場合、一番近い業種や専門職分野同士が年中喧嘩してうまくいかないという話をしていました。確かアメリカの月への有人宇宙計画のケースも最初は、発射台、ロケット、エンジンなど3分野だかに分けてやらせたら、全く協調性が無く、結局組織として、目的を一つにして、取りまとめて、やっと間にあったという話を聞いたことがあります。当然組織である以上、リーダーシップが重要であることは言うまでもありませんが、グループ全員が、組織の仕事の中身を同じレベルで理解をしておけることが、プロジェクト仕事のような場合は特に重要です。

当然仕事の出来る人というのは、日本のようにjob classificationがはっきりしていないだけに、色々な仕事が、出来る人のところに集まってしまうというのも必然のようです。

だから、大手一流企業の人事部長が、新入生に期待する能力とは、コミュニケーション能力と基礎学力だとTVのインタビューで答えていましたとが、よく調べてみると、コミュニケーション能力等という大げさな話ではなく、「名前を呼ばれたら返事くらいしろ」、基礎学力とは「四算くらいはきちんと出来るようにしておけ」ということのようです、と以前にも書きました。

従って新入生の皆さんには、何かを聞かれたら、何を聞かれているのかを良く理解した上で、ちゃんと返事をして下さい。そして何か仕事を頼まれたら、ちゃんと期限を区切って、何時までにやらなくてはならないかを理解して、仕事を始めて下さい。この二つをきちんと守れるだけで、結構評価は高くなると思いますよ! しかし意外と簡単なようですが、これが案外難しいということも付け加えておきます。