イスラム国と避難民(日本の貢献のありかた)

アメリカ大統領はゲリラ集団を弱体化し、殲滅させるために、国連を使ってアラブを含む各国に国際協調を呼びかけ、仲間を募って、今までイラク国内に限定していた空爆をシリアにまで伸ばした。

しかし、考えてみればやっかいな話で、国連はもともと国家間の問題を扱う機関で、自称「イスラム国」と称していても所詮ゲリラ集団は国家たりえず、にもかかわらず、主権国家であるシリア内で爆撃を行っている。

空爆で短期にどれだけのゲリラにダメージを与えられるのか、軍事専門家でもない私にはわからないが、常識的に考えても、極めて限定的な効果しか得られないだろうと想像します。

しかし、空爆の結果、当然ながら、民間人は自分の居住地を離れ、隣国へ何十万あるいは何百万単位で避難民となる。避難民はトルコ国境を目指して避難しているようですが、その受け入れ準備も出来ないで、国連も困っているようです。

この問題以前に、もともとアサド政権に対抗していた反政府勢力とアサド政権側との内戦状態で流出した避難民がヨルダンに避難し、その数すでに十数万人の難民キャンプが出来て、日本のNPOも国連の組織下で面倒を見ているという話を、直接そのNPOの責任者からも聞く機会が最近ありました。

一旦こうした難民キャンプに定着してしまうと、そう簡単に元に戻れる状況でもなく、やむを得ずそこを拠点として、何とか自活する方法を考えることになります。

私自身もベイルートにいて、第4次中東戦争のあおりを受けて、家族ごと避難民として、家財その他一切をベイルートにおいたまま、ロンドンで避難生活を送ったことがありました。

私たちはまだ自国や他国で働く場所があり、単に家財を失っただけですのでが、シリアの難民は着の身着のままで、帰るところもなく、異国の難民キャンプで一家の命を綱がなければなりません。

日本のNGOの仕事が大変なのはよくわかりますが、その資金も十分とは言えず、しかも、やっている仕事は先行きの目処もつかず、何時彼らが平和なシリアの町に帰れるのかはわかりません。

こうした仕事は私たちからすれば出口のない仕事で、言ってみれば、大国のエゴの後始末を引き受けているようなもので、避難民はかわいそうだが、全く生産性のない仕事であろうと思っています。

日本は同じ金を使うなら、むしろ平和時に、貧困の格差や貧困層の所得倍増など、前向きな仕事に金を使い、紛争予防のようなプロジェクトを各国で進めることを考え、実施すれば、紛争防止に役立つはずです。

そんな話を当のNGOとお話ししたところ、全くその通りだが、現実はこうした、トイレのないマンションの便所掃除もやらざるを得ないという現実の話でした。

かつて、ベイルートでフランスの武器商人と話をする機会があり、そのときに聞いた話では、戦車を売っているとのことでした。現在イスラム国は、石油を売って高級な武器も買っているという話です。

しかし、国連であれだけ各国が、「イスラム国」は国際的脅威であるとしながらも、どこの大国からも、シリアとイラクに接する国境で武器の流通を止めよういう話が出てこないのは、ほとんどの大国が作った武器が何らかの形でゲリラに渡っているはずで、ロシア、欧米、中国など主たる武器の輸出国が一方では商売をしているとしか思えません。

私がかつて中東で経験した色々な紛争は、結局時の政府の問題だけではなく、中東という地域特性から、外国の色々な思惑が錯綜して、複雑な関係を現地の人たちに植え付け、結果として、現地の一般住民が被害者になるというパターンでしかないというのが結論です。

日本政府のODA等の使い方も、国際貢献という目標は当然として、前向きな貢献、予防的な貢献などにもっと大々的に金を回すことを考えなければならない時期に来ていると思います。インフラの整備や経済原則に則った仕事は、輸出信用や民間投資などでも充分カバー可能なはずですから。

同時並行でインフラ整備もやるが、日本政府としては、前向きな積極的紛争予防や貧困層対策を集中的にやるべきでしょう。そうすれば安倍首相のお話の「積極的平和外交」も相手から理解される時が来るでしょう。