人前でも食事のマナーに手厳しい母親

イタリアのSavonaという所から来られた良家のお嬢さんと、フランスの学校で下宿が一緒のご縁で、イースターの休みにその実家に遊びに行ったときの話である。

父親はサッカー好きの医者、お兄さんも英国で勉強した医者、弟さんは高校生で、皆同席で母親の手料理をごちそうになった。

母親の隣に弟さんが座り、私は真向かいに座ってごちそうを頂いていると、突然、母親が彼の肘を思いっきり払いのけた。私は何が起こったのか想像はついたが、黙って成り行きを見ていると、母親が「ごめんなさいね、しつけが悪くて。『テーブルに肘をつくなんて恥ずかしい』といつもやかましく言っているのですが」という話をされた。

私は、例え客の前でもきちんとしかる時にはしかるというその母親の態度に感心して、「日本でも最近は食事のマナーが悪く、私なんかも年中しかられています」と話すと、「しつけは若いうちにやらないと駄目なのです。うちのお父さんなんか、恥ずかしくて一緒に外食なんかできません」とおっしゃった。

これは日本もイタリアも同じだが、最近の日本で、自宅で食事をするときに自分の息子にやかましくマナーを注意する母親がどのくらいいるのか。こんな何でもない風景が、日本の食卓からもだんだん消えていくのだろう。